福岡高等裁判所宮崎支部 昭和27年(う)462号 判決
よつて記録を調査すると本件起訴状には鹿児島家庭裁判所裁判官のなした被告人に対する観護措置決定及び送致決定が添附せられていることは所論のとおりである。しかして右送致決定中の罪となるべき事実として本件傷害並びに傷害致死の事実の外恐喝の事実も掲記せられているところ刑事訴訟法第二五六条第六項には起訴状には裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他のものを添附し、又はその内容を引用してはならないとあるのは裁判官に予断を抱かせないで公平に審理裁判をなさしめようとする趣旨であるから被告事件の成否に関するものだけでなく情状に関する書類等をも添附してはならないものと解せられるところ右送致決定中の恐喝事実の内容を検討すると裁判官をして被告人に対して悪意の推定を抱かしむるに足るものであつて起訴状にこのような書類を添附することは前掲の立法の趣旨に反するものといわなければならない。しかして右の起訴状一本主義はその立法の趣旨に照し厳格な効力規定と解すべきであるから前記の書類を添附した起訴状は同条項の精神に反するものとして無効といわなければならない。従つて原審としては刑事訴訟法第三三八条第四号により本件の公訴を棄却すべきであつたにかかわらず事こゝに出でず不正法に公訴を受理して本案の判断をしたのであるから原判決には刑事訴訟法第三七八条第二号に該当する不法があるというべきであり論旨は結局理由がある。